2010/11/18

高校世界史レベルの知識を即成でインストールする方法

世界史が苦手だったというのもあり、残しておく。
世界史だけじゃなくて、日本史その他にも応用できそう。
地理は好きだったのだが、思い返してみるとこういう勉強をしていたかも。
地理は個々の項目の関係性が理系チックなので、受け入れやすかったんだよね。


  • それじゃあ、高校世界史レベルの知識を即成でインストールする方法、書きます。
  • まず、総論。「高校レベルの世界史に通暁するとはどういうことか?」という問いに応えましょう。教材研究した結果から言えば、これは三段階の学習を行ったかどうか、になります。レベル1:〈通史〉。レベル2:〈テーマ史〉。レベル3:〈論述〉。この段階で世界史を頭にインストールすればよい。
  • 一つずつ説明しましょう。〈通史〉:いわゆる高校世界史が想定する各地方史の流れを押さえた知識。古代史からWWII後の現代史までに一本の筋が見えているかどうか、ということ。〈テーマ史〉は、その知識の上にやってくる横断的な歴史事情を読解けるか、ということ。です。
  • 最後に〈論述〉は、通史・テーマ史の語彙・基礎知識を押さえた上で、事実の流れを50字とか200字とか、その程度の完結明瞭な事実として要約できるか、という記憶力×構造理解力×日本語力の総合的な運用を試されるものです。
  • 以上、Lv1〈通史〉→Lv2〈テーマ史〉→Lv3〈論述〉という三つの課題を潜り抜ければ、世界史というものは無理なく学習することができる、というのが僕の持論です。……では、どのようにそれを学習すればいいのか?
  • 僕はあらゆる学習設計を次のようにすすめています:A.〈教材批評〉→B.〈教材運用=学習法設計〉→C.〈現場チューニング〉。高校世界史の学習に対しても、この基礎を厳守すればよいと考えます。では、世界史の教材批評をしてみましょう。
  • まず、日本で学習する際、山川出版の『高校世界史B』は必携です。大人のための、なんて絶対に買わないでください。学参コーナーで普通に高校生用の教科書が買えますhttp://www.yamakawa.co.jp/textbook/whb016.html
  • なぜ山川出版なのか? 第一に、高校史学についての教科書編纂が、どの教科書よりもハイパーリンクしているからです。運用時に再度解説します。ともあれ、山川がムリでも、高校の世界史教科書が何より学習の基礎となります。なぜか? これこそ、Lv1〈通史〉をクリアするための基礎資料だからです。
  • ほかの多くの知識伝達本がそうであるように、高校世界史もまた、「目次」に一定の意味があります。「その順序で読めば、あるひとつの視座を世界史に対して得ることができる」という、編纂者サイドのデザイン・コンセプトが確実にあるわけです。
  • まず、その「編纂者の順序」を把握するところから始めましょう。ファーストゲームです。というわけで、【課題その1】「『山川世界史B』を通読する。回数は最低二周。」これができれば、Lv1〈通史〉は難なくクリアできます。
  • 高校生の、授業の進度と並行した運用法では、これはダルくてやってらんないでしょう。ほかの勉強も並行しなければ受験に受からないですし。しかし、二十歳も超えれば、自分のための読書くらいできるようになっているはずです。まるで『山川世界史B』を、善くできた新書のように扱いましょう。
  • a.「教科書は汚してナンボ」書籍を汚すことには多事争論ありますが、そのページにあったほうがよい知識を遠慮なく色つきボールペンで書込みましょう。b.山川世界史には別ページのリンク誘導があります。なぜそのリンクがついているのか、別ページに飛んで考えてみましょう。
  • 特にb.のページ誘導は極めて大事です。なぜなら、「通読する」にしても、結局歴史とは「他方が勝てば他方が負けている」ものであり、必ずステークホルダ間で記述が重複しているからです。日本が負ければ連合国が勝ってるわけです。世界史とは単一の記述の暗記ではありません。「視点の暗記」です。
  • そういうわけで、読むのがしんどい、なぜだろう? と思ったら、山川世界史のリンク誘導を適当にネットサーフィン感覚で飛んでみてください。そのうち、「なぜ山川世界史は電子教科書ではないのだろう?」と疑問に思うほどの学習効果を得られるはずです。そして、現代史まで辿り着けばよいです。
  • さて、ここまでがLv1です。ところが、Lv2以降はもう少し複雑です。もう一度教材批評に戻りましょう。何が必要でしょうか?「地図的な把握」「年表的な把握」「マイナー単語含めた語彙の把握」の三種類です。これに対応する教材はなんでしょうか?
  • 正解:「世界史資料集」および「世界史単語集」です。僕は一応、山川の世界史綜合図録 http://amzn.to/dkewTM と山川の世界史B用語集 http://amzn.to/cwrpgf を利用しています、用語集はマストですが資料集は山川以外の方が優秀かも(実感として)。
  • さて、通史を終えたら、好きな世界史用の演習問題本を一冊、買ってきましょう。これはなんでもいいです。たとえば山川の『私大・二次対策世界史B問題集』http://amzn.to/9vBJI7 とかは、僕が今言っている話に応用しやすいものになっています。
  • そして、これからが本番です:問題集に対して、「持込み試験」を始めましょう。「教科書/資料集/単語集」の三冊を机の上で全力で検索し(手動でググれ!)、目の前の問題を端から順に解いてゆきましょう。
  • この時、暗記しているかどうかは問いません。「目の前の資料の〈どこ〉に〈なに〉が書いてあり、それが〈どれ〉と関連する知識として配置されているか?」を、問題という触媒を通して確認していく作業をやるのであって、貴方の記憶力の良さなどこれっぽっちも聞いていません。
  • 要するに、世界史の教科書は、学習するまで謎めいているんです。なんでこんな記述が羅列されているのかわからない。構造分析するまで難解な長文問題がわからないのと同様、世界史も検索して脳に汗を流さなきゃ、その内的整合性が意味不明なままおわってしまうのです。
  • だから、「通史を理解するために山川二周」の次に来るタフな課題はこうなります:【課題2】「教科書/資料集/用語集の3点セットを持込み、目の前の問題集に対して“検索ゲーム”を仕掛けろ」。
  • これが実は、世界史において得なければならないLv2の知識である「テーマ史」と関連します。世界史の問題は、言ってみれば教科書の知識を変則的に並び替えただけのものです。たとえば「中国の官僚制度の変化」というテーマを置けば、世界の情勢ではなく中国のそれを再配置する頭がなければならない。
  • だから、Lv1が通史なわけです。ファースト・ゲームを終えた後に獲得したリソースを、セカンド・ゲームでは並び替えさせられるわけです。しかし、その並び替えこそが、稿高レベル世界史の構造的把握をさらに定着させます。これを考えうるあらゆるテーマに仕掛ければ、世界史知識は修められます。
  • ここまで出来れば、概ね世界史は整理完了です。ただし、高校受験生だと、そうはいかないかもしれません。二次対策に論述がありますね(笑)。だから、大人も論述ができるように、Lv3.の論述について、少しだけ話して終わりましょう。
  • 論述問題とは何かといえば、「テーマ史の理解をむりなく日本語で排列する」というだけのことです。例を挙げましょう:「清の軍事制度である『八旗』について説明しなさい。(50字以内・一橋大 改)」。
  • これの「50字」をまともに考えては、いけないんですね。そうではない。記述問題は、「あなたは箇条書きでポイントを作れるか?」と聞いています。だからまず、普通に箇条書きすればいいのです。
  • ここでは「ヌルハチが創始した/女真人による軍事組織である/同時に平時には行政組織でもある/八軍に分けられる/所属者は旗人と呼ばれる/後にモンゴル人によるモンゴル八旗・漢人による漢軍八旗も加えられた」あたりを羅列できれば、とりあえず仕事の八割は終わりです。
  • ちなみに、これを羅列するために、Lv1「通史」とLv2「テーマ史」それぞれの理解が前提となるわけですね。記述問題がLv3たるゆえんです。
  • さらにその上で、「50字以内で応えるなら何が重要か?」と、先ほど箇条書きした6個のうち、優先度の高いものを選び取って文字化すればいいわけです。この辺はマス目を埋めるカウンティングの技術になり、ほとんど受験テクニックですが。
  • さて、先ほどの解答:「ヌルハチが創始したすべての女真人による軍事及び行政の組織であり、後に蒙古八旗・漢軍八旗も加えられた。(50字)」
  • これが何を意味しているかというと、さきほどの6個の箇条書きのうち、「八軍に分けられる/所属者は旗人と呼ばれる」あたりは優先度低いと見なされ脱落し、さらに「平時には行政組織でもある軍事組織」という説明をじゃっかん優先度下げて簡略化しているのですね。
  • したがって、論述に強くなるための【課題3】:「あるテーマ史的(Lv2知識活用)な問いに対して、通史的理解(Lv1知識活用)を総動員して必要な知識を箇条書きし(国語力活用)、字数指定にもとづく優先度吟味(これまでで培ってきたはずの、世界史に対する妥当な価値判断能力の行使)を行う。
  • ここまでできれば、僕が最初に述べた〈通史〉→〈テーマ史〉 →〈論述〉の3ステップはクリアできます。なお、これらを「検索ゲーム」で説いてOKです。どうせわれわれはGoogle先生の世界にいるのですから、鍛えるべきは目の前の本に対して検索を仕掛ける力です。補給のない所で生き抜く力です。
  • 最後に全体を貫くもうひとつの補足:世界史資料集において、「地図情報」は極めて大きな意味をもちます。たとえば、各国史にとどまらない「2世紀の世界」「14世紀の世界」といった見取り図から、一体何が読み取りうるかという問題は、Lv2〈テーマ史〉におけるもっともベーシックな問いかけです。
  • これは言ってみれば「ヨコの世界史」なわけです。では、「タテの世界史」は? これが「年表」なわけです。世界史の横断的理解の表象が「地図」であり、世界史の縦断的理解の表象が「年表」なわけです。地図と年表。この地図と年表を暗号と思わず読解ける力をつけることが、最終的な到達風景です。
  • 以上、世界史の学習法を整理しました。ちなみに今、この方法で大学受験の世界史を家庭教師しております。商売のタネですが、実践するにはコーチが必要なものでもあるので(笑)、公開した次第です。
  • ひとつ付け加えるならば、人名を覚えるときについでにアルファベット表記も暗記するとなお良いですね。受験では関係ないかもしれませんが、検索などでアクセス出来る情報量が全く違ってきます。
  • 『世界史B用語集』に載ってる範囲でしか世界史の問題は出ません。逆に、教科書と資料集をひっくり返しても出ない問題はあり、それが世界史嫌いを加速させます。
  • なお、僕のA.〈教材批評〉→B.〈教材運用=学習法設計〉 →C.〈現場チューニング〉 という順序は、馬場秀和さんという文章家のゲーム批評にヒントを得ています。「何がしかのメカニズムをもとに、現場に知的遊戯環境を設計・召喚する」という技術全般に通用する作業フローだと僕は思ってる。
  • 地図情報の強調がいまいちよわかったかもしれん。教科書だけではダメで、「資料集」「用語集」の三点セットじゃないと時間がかかるんですよ。地図を補うため。
  • 各社の資料集は、「どういう風に地図を描けば、情報の効率化が進むか」の精髄を提供してくれています。これを使わず『山川世界史B』だけを読み続けると、苦痛かも。ちょっとでも「頭に入らないな」と思ったら,お手持ちの世界史資料集がその現象をどうヴィジュアライズしてるか確認してください。

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